「祈るための独り旅」
A. 居酒屋「和民」の創業者
先週、和民の会長・渡邉美樹氏がNHKラジオ、「明日へのことば」という番組に出演していました。氏が小4のときにお母さまが亡くなりますが、中1の頃、ある宣教師からこう言われたといい
ます。「…お母さんがよみがえっていたとき、君がそこにいるためには、クリスチャンになる以
外に方法はない…」と。これを聞いて、氏はクリスチャンになりたいと熱望し、中3で洗礼を受け
ましたが、その後、疑問を感じて信仰から離れて行ったそうです。
信仰生活においては、各個人が祈りによってイエス様につながっていることが大切です。使徒
パウロは、一人旅に出て、神と共に過ごす時間を確保したというのが今回の箇所です。
B.聖書より
さて、わたしたちは先に船に乗り込み、アソスに向けて船出した。パウロをそこから乗船させる
予定であった。これは、パウロ自身が徒歩で旅行するつもりで、そう指示しておいたからである
。使徒言行録20章13節
伝道旅行中の一行は、エルサレムを目指していましたが、パウロだけ徒歩で行くことにしました。それは、多くの人々と出会って伝道する前に、イエス様と二人だけで歩きたかったからです
。これからも起こる迫害と殉教の死に備えて、歩きながら一人で祈りの中で主と交わり、自分を
献げる意志を固めて、元気づけたかったのでしょう。それはちょうど、イエス様が捕えられる前
夜、弟子たちから離れ、ゲッセマネの園で一人、神に祈られたのと同様です。私たちも、重大な
出来事に直面する前には、神さまと深い交わりに入るため、人との交わりから離れ、祈る時間を
確保する必要があるのです。
C. 聖書を読み、祈っていたガリレオ・ガリレイ
ガリレオ・ガリレイは、16世紀後半〜17世紀前半のイタリアの物理化学者、天文学者、哲学者
です。実験や観測をもとにして自然科学の法則を発見するやり方を確立させたのがガリレオでし
た。彼が発見したのは、重さが違うものでも、空気抵抗がなければ同時に落ちる、という真理で
した。また、天体を観測したうえで地動説を主張したため、カトリック教会の宗教裁判で地動説
を捨てるように言われます。地動説は、「神の偉業を否定する説」だったので、教会はその権威
を失わないようにと、ガリレオに地動説を世間には広めないよう命じたのです。ガリレオは、「
聖書は天への道を示すものであって、天が動く様子を伝えるものではない」と記しています。
そして、誠実なカトリック教徒であったガリレオは、聖書と科学について、ある手紙にこう書
いています。「聖書には誤りがありえぬとしても、誤りを犯すものもあるかもしれません。その
うちでももっとも重大でよく起こる誤りは、つねにことばの〈文字通りの意味に〉固執しようとする場合で、こういうときにはさまざまな矛盾だけではなく、重大な異端や冒?さえ生じかねな
いからです…」と。
これらの文章から、ガリレオがよく聖書を読み、祈っていた人であることが分かります。天体観測をしながら、ガリレオは独り、神さまと対話し、その祈りの中で力を受けていたと言えそう
です。1992年、ローマ教皇ヨハネ・パウロ2世は、ガリレオ裁判が誤りであったことを認め、ガリ
レオに謝罪しました。ガリレオの死去から実に350年後のことです。
D.結び
パウロは、必然性がないのに、船に乗らず、独り歩きながら神と対話する道を選びました。私た
ちも、一見無駄に思えるような独り旅(散歩、サイクリング、ドライブなど)に出て、神さまと
共に過ごす時間を取りましょう。そして神から、この世の悪と戦う知恵と力、発想や希望を与え
ていただきましょう。
御翼2011年2月号その2より